ホームページに会員登録や予約、ネット販売の機能を付けるときは、利用規約で取引のルールを示しておくことが大切です。民法の定型約款で規約が契約の内容になる条件、変更のルール、消費者契約法で無効になる条項、特商法表記などとの役割分担を整理します。

この記事の監修者


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H.Yamashita

新卒で三井住友銀行に入行後、11年間幅広い業種業界・企業規模の法人を担当し、融資業務を中心としたコンサルタント業務に従事。子会社の信託銀行では、専務直属の新規事業企画室にて新規企画推進を担当。

銀行員キャリアのラストは本店営業部にて従事し、不動産・建設業界の上場企業を担当。


その後、WEBマーケティングに強みを有するスタートアップ企業に転職し、企業のあらゆるお悩みや課題を解決し、貢献したいという想いからコンサルタントとして独立、起業。

セールスライティング、WEBマーケティング、SEO、MEO、SNS、広報、WEBサイト制作など、財務や経営管理以外にも幅広い実績を有するオールラウンドな経歴を持つため、一気通貫であらゆるお悩みや課題の解決に貢献できる。

二人三脚スタイルの伴走型支援で当事者意識を持って高い熱量でサポートすることが強みであり特徴。クライアント数は140社超える。


利用規約は、サービスの約束ごとを先に決めておく文書です


会社案内が中心のホームページであれば、利用規約がなくても困ることはあまりありません。しかし、会員登録、オンライン予約、ネット販売のように、ホームページ上で利用者と取引をする機能を付けると、事情が変わります。

キャンセルはいつまで無料か。登録した会員が禁止行為をしたらどうするか。システムの不具合で予約が取れなかったとき、どこまで対応するか。こうした取り決めを利用者一人ひとりと個別に交わすのは現実的ではありません。そこで、共通のルールを文書にまとめて示すのが利用規約です。

利用規約は、どこかのひな形を貼れば済むものではありません。キャンセル料の金額や期限、退会の手続き、返品の扱いなど、自社のサービスの中身が決まっていなければ書けない項目が多いからです。この記事では、利用規約を作る前に押さえておきたい法律のルールと、機能ごとに決めておきたい項目を整理します。


利用規約・特商法表記・プライバシーポリシーの役割分担

ホームページには、利用規約と似た位置に置かれる文書がいくつかあります。役割が混ざると、同じ内容が食い違って書かれる原因になるため、最初に整理しておきます。
 ・利用規約:サービスを利用する際の、事業者と利用者との約束ごと。申込みの成立、禁止事項、キャンセル、免責、規約の変更など
 ・特定商取引法に基づく表記:通信販売を行う事業者が、広告に表示することが求められる事項。事業者名、価格、支払時期、返品の扱いなど
 ・プライバシーポリシー:個人情報をどのような目的で利用し、どう管理するかを示す文書

たとえば返品の扱いは、特商法表記にも利用規約にも出てくることがあります。この場合、両方の記載が一致しているかを確認する必要があります。特商法表記の項目は131の記事、プライバシーポリシーの項目は121の記事で詳しく扱っています。この記事では、利用規約そのものに絞って説明します。



利用規約が契約の内容になる条件(民法の定型約款)

2020年4月1日に施行された改正民法で、「定型約款」に関するルールが新しく設けられました(民法第548条の2から第548条の4)。ホームページの利用規約を考えるうえで、土台になる規定です。

民法では、まず「定型取引」を、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、その内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なものと定めています。そして、定型取引で契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体を「定型約款」としています。法務省のパンフレットでは、定型約款が用いられる取引の例として、インターネットを利用した取引が挙げられています。

一方で、法務省は、約款と呼ばれるものでも民法の定義に当たらないもの、たとえば事業者間で使われる契約書のひな形や労働契約に使われる契約書には、このルールは適用されないと注意しています。BtoB向けの会員サイトなどでは、自社の規約がどちらに当たるかも確認が必要です。

定型約款が契約の内容になるのは、民法第548条の2第1項によると、次のいずれかの場合です。
 1.定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
 2.定型約款を準備した者が、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

この条件を満たすと、利用者が個々の条項を読んでいなくても、個別の条項について合意したものとみなされます。法務省のパンフレットでは、2つ目の「表示」について、取引を実際に行う際に、顧客に対して定型約款を契約の内容とする旨を個別に表示することが必要と説明しています。

ホームページに置き換えると、フッターに利用規約へのリンクがあるだけでは、この「個別の表示」に当たるかどうかが心もとない構成です。会員登録や予約、購入の申込みボタンの近くに、利用規約を契約の内容とすることと、規約へのリンクを示しておく設計が考えられます。同意のチェック欄を設けるなど、合意したことが画面上で分かる形にしておくと、1つ目の「合意」の形にも近づきます。


規約に入れても合意したことにならない条項がある


定型約款の条件を満たしても、すべての条項が有効になるわけではありません。民法第548条の2第2項は、相手方の権利を制限したり義務を加重したりする条項で、取引の態様や実情、取引上の社会通念に照らして、信義則(民法第1条第2項)に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなすとしています。

つまり、「規約に書いて同意ボタンを押してもらえば何でも通る」わけではありません。利用者に不利な条項を入れる場合は、その取引で本当に必要な内容か、利用者から見て想定外の負担になっていないかを検討する必要があります。


規約の内容を見せるルール

民法第548条の3は、定型約款を準備した者は、合意の前または合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合、遅滞なく、相当な方法で定型約款の内容を示さなければならないとしています。そして、合意の前にこの請求を拒んだときは、第548条の2の規定は適用しない、つまり規約が契約の内容にならないとしています(一時的な通信障害などの正当な事由がある場合を除く)。

また、消費者契約法第3条第1項第3号は、定型取引に当たる消費者契約の勧誘をする際に、事業者は、消費者が定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置を講じている場合を除き、内容の表示を請求するために必要な情報を提供するよう努めなければならないとしています。

ホームページで取引をするのであれば、利用規約を常に閲覧できるページとして公開し、申込みの画面からすぐに開けるようにしておくのが、利用者にとっても事業者にとっても分かりやすい形です。


監修者からのポイント

利用規約は、文面よりも先に、キャンセルや退会の運用が決まっているかどうかで仕上がりが変わります。運用を担当する方に早い段階から入ってもらうと、実態に合った規約になります。

エクシードでは、会員登録や予約、ネット販売の機能を持つホームページの制作をご支援しています。申込みの流れの整理から、利用規約や特商法表記を置く位置、同意を取る画面の設計まで含めてご提案します。新しい機能の追加やリニューアルを検討されている方は、お気軽にご相談ください。

営業時間: 10:00~19:00

規約を変更するときのルール

サービスを続けていると、料金体系や機能の変更にあわせて利用規約を見直す場面が出てきます。民法第548条の4は、利用者と個別に合意せずに規約を変更できる場合を、次のいずれかに限っています。

 1.変更が、相手方の一般の利益に適合するとき

 2.変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、規約を変更することがある旨の定めの有無とその内容、その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき

変更するときは、効力が生じる時期を定め、規約を変更する旨、変更後の内容、効力発生時期を、インターネットの利用その他の適切な方法で周知しなければなりません。2つ目の場合は、効力発生時期が来るまでに周知しなければ、変更の効力が生じないとされています。

法務省のパンフレットでは、約款の中に「当社都合で変更することがあります」と書いてあっても、一方的に変更ができるわけではないと説明しています。規約の変更をお知らせするページや、会員へのメール配信の手順も、あわせて決めておくと運用しやすくなります。


消費者契約法で無効になる条項


利用者が一般の消費者の場合は、消費者契約法も確認が必要です。消費者契約法には、事業者と消費者の契約で無効となる条項が定められています。利用規約でよく問題になるのは、次の規定です。

事業者の損害賠償責任を免除する条項(第8条)
 ・事業者の債務不履行や不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項、または事業者に責任の有無を決める権限を与える条項は無効です
 ・事業者やその従業員などの故意または重大な過失による場合に、責任の一部を免除する条項も無効です
 ・消費者庁の逐条解説では、「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない」といった条項を、全部を免除する条項の例として挙げています

一部を免除する条項と「法律上許される限り」(第8条第3項)
令和4年の改正(令和5年6月1日施行)で、損害賠償責任の一部を免除する条項は、重大な過失を除く過失、いわゆる軽過失の場合にだけ適用されることを明らかにしていなければ無効とされました。逐条解説では、「法律上許される限り、賠償限度額を〇万円とする。」という条項を無効となる例として挙げ、「関連法令により許される限り」といった書き方でも同様としています。一方、「弊社に故意又は重大な過失がある場合を除き」「弊社に軽過失がある場合に限り」のように書いた条項は、この規定によっては無効とならない例として示されています。

ひな形の利用規約には「法令で許される範囲で」といった表現が残っていることがあります。古い規約を流用する場合は、特に見直したい部分です。

消費者の解除権を放棄させる条項(第8条の2)
事業者の債務不履行によって生じた消費者の解除権を放棄させる条項や、事業者に解除権の有無を決める権限を与える条項は無効です。

キャンセル料・違約金の条項(第9条)
契約の解除に伴う損害賠償の予定や違約金を定める条項は、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害の額」を超える部分が無効です。支払いが遅れた場合の損害賠償の予定や違約金は、年14.6パーセントの割合で計算した額を超える部分が無効です。また、消費者から説明を求められたときは、キャンセル料などの算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないとされています(第9条第2項)。

消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)
消費者の不作為をもって新たな契約の申込みや承諾をしたものとみなす条項などを例に挙げたうえで、法律の規定を適用する場合に比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とされています。

あわせて、消費者契約法第3条第1項第1号は、事業者に対し、契約の条項を定めるにあたって、解釈に疑義が生じない明確なもので、消費者にとって平易なものになるよう配慮する努力義務を定めています。専門用語を並べるより、利用者が読んで分かる言葉で書くことが、法律の考え方にも沿った作り方です。


会員登録・予約・ネット販売で決めておくこと


利用規約の文面に入る前に、サービスの運用ルールを社内で決めておく必要があります。機能ごとに、よく必要になる項目を挙げます。

会員登録を付ける場合
 ・登録できる人の条件(年齢、法人・個人の別など)
 ・ログイン情報の管理の責任と、不正利用が分かったときの連絡方法
 ・禁止事項と、違反があった場合の対応(利用停止、登録の抹消など)
 ・退会の方法と、退会後のデータの扱い
 ・有料プランがある場合の料金、更新、解約の手続き

オンライン予約を付ける場合
 ・予約が成立するタイミング(申込み時か、確認メールの送信時か)
 ・キャンセル・変更の期限と、キャンセル料の有無や金額
 ・無断キャンセルや遅刻の扱い
 ・店舗側の事情で予約を取り消す場合の対応

キャンセル料を設定する場合は、第9条の「平均的な損害」との関係を意識して、金額の考え方を社内で説明できるようにしておきます。

ネット販売を始める場合
 ・注文が成立するタイミング
 ・支払方法と支払時期、配送と引渡しの時期
 ・返品・交換の条件(特商法表記の記載と一致させる)
 ・商品に不具合があった場合の対応

共通して決めておくこと
 ・事業者の責任の範囲(故意・重過失を除くことを明記するかどうかを含む)
 ・システムの停止や保守の扱い
 ・規約を変更する場合の手順と周知方法
 ・問い合わせ先


ひな形を使うときの注意


利用規約のひな形は、書き始めの目安としては役立ちます。ただし、ひな形は特定のサービスを前提にしていないため、次のような食い違いが起こりがちです。
 ・自社にない機能(ポイント、投稿機能など)の条項が残っている
 ・キャンセル料や返品の条件が、実際の運用や特商法表記と一致していない
 ・「法令で許される範囲で責任を負わない」など、令和4年改正前の書き方が残っている
 ・事業者名やサービス名の置き換え漏れがある

ひな形を使う場合も、自社のサービスの流れに沿って一条ずつ読み直し、運用している担当者が内容を確認することが大切です。


よくある失敗


・利用規約をフッターにリンクしただけで、申込み画面からは見えない
・規約の変更日を記録しておらず、どの版に同意したのかが分からない
・予約フォームのキャンセル規定と、利用規約のキャンセル条項の内容が違う
・「当社は一切責任を負いません」と書いている
・事業者向けと消費者向けのサービスで、同じ規約を使い回している


本記事の内容は、執筆時点で確認した民法、消費者契約法、法務省と消費者庁の公表資料にもとづいています。法律や解説は改正・更新されることがあるため、公開前には所管省庁の最新の資料を確認してください。個別の条項が有効かどうかの判断は、弁護士などの専門家や、消費生活センターなどの相談窓口にご相談ください。

まとめ  

ホームページの利用規約を作るときに押さえたいポイントは次の通りです。


 ✓利用規約、特商法表記、プライバシーポリシーは役割が違う。重なる項目は内容を一致させる

 ✓民法の定型約款のルールでは、規約を契約の内容とする合意か、取引の際の個別の表示が必要。申込み画面の近くで示す設計にする

 ✓規約の変更は、利用者の利益になる場合か、合理的な場合に限られ、効力発生時期を決めて事前に周知する

 ✓消費者契約法では、全部免責、故意・重過失の一部免責、「法律上許される限り」型の一部免責、平均的な損害を超えるキャンセル料などが無効になる

 ✓文面の前に、キャンセル、退会、返品などの運用ルールを社内で決めておく


利用規約は、トラブルが起きたときに利用者と事業者の双方が立ち返る文書です。自社のサービスの流れに合った内容にしておくことが、安心して使ってもらえるサイトにつながります。

編集部コメント

規約を改定したときは、変更日と改定内容をページ内に残しておくと、あとから確認しやすくなります。予約フォームや確認メールの文面も、規約と同じタイミングで見直してください。

この記事の編集者

スタジオ15_800px_R

C.Ogawara


大手食品メーカーにて約1年半、商品開発および営業業務に従事。市場ニーズを踏まえた企画提案や顧客対応を通じて、顧客視点を重視した課題解決力を培う。


その後、WEBディレクター兼SEOコンサルタントとして2年目のキャリアを歩み、他の一流コンサルタントの厳しくも愛のある指導のもと日々奮闘中。

ホームぺージ制作やSEO対策業務に携わり、検索流入の改善やコンテンツ制作を支援。 キーワード選定、記事構成の作成、リライトなどを通じて、検索意図に沿ったコンテンツ設計と継続的な改善に取り組んでいる。 毎日キーワード分析を行い、これまで分析したサイト数は業種業界を問わず200サイトを超え、最新トレンドや業界別の特徴や差別化要素を提案できることが最大の強み。

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